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夜が明ける少し前(Caution! R-15)

by 幸坂かゆり

 過去の恋愛を思い出していた。

 眠れない明け方にそんなことを思い出すなんて。窓から入る雨の匂いと湿気を含んだ風があの時期に似ているせいだろうか。感傷に浸るのはあたしの趣味じゃないけど懐かしい想いは胸を熱くした。コーヒーを入れて煙草をゆっくりふかしながら椅子に座り、あの日のことを少しだけ想う。

 当時、あたしたち3人は周りから見たら奇妙な関係に映ったかも知れない。ルミとユンとあたし。あたしたちは性の関係も受け容れた3人の恋人だった。ルミとあたしは高校を出て就職した先で出会い、あたしが職場を変えてからもそのままよく遊んでいた友達だ。ユンはあたしの恋人で転職した先の飲食店で知り合った。ルミには恋人がいなかったので3人でよく遊びに行った。

 ある日、あたしとルミが一緒に部屋にいると仕事が思ったより早く終わった、と言ってユンがあたしの部屋に来た。連絡のひとつくらい入れて欲しかったが帰すまでもなかったし、珍しい出来事に喜んで、あたしたちは3人で飲んだ。普段あまり飲まないルミもいつもより飲んでいて頬が火照っていて桃のようだった。飲みすぎてしまったかな、と思った時、ユンはおもむろに服を脱ぎ、ルミがいると言うのにあたしにセックスを強要してきた。あたしは瞬時に、ばか、ルミがいるのよ、と抵抗したけれど当のルミは、にやにや笑ってあたしたちを見ていたので驚いた。

「いいじゃない。やれば? 写真撮ってあげようか?」

「お願いします!」

 ユンはそう言うとあたしのスカートの中に手を入れて来た。あたしは困って瞬時にルミを見たが普通に微笑んでいた。ルミがオッケーしてくれるならいい、と思い、あたしも遠慮するのをやめた。

 ルミは携帯電話であたしたちの姿を撮ろうとしていたが、動いているあたしたちはブレて上手く撮れないらしく眉間に皺を寄せていた。やがて諦めて電話をテーブルの上に置いた。

「ねえ、あたしも興奮してきちゃった。仲間に入れて。いやならひとりでするから」

 信じられなかった。あたしは結構こういうことは平気で、以前の恋人とも3人とか4人でセックスをしたことがあったが、まさかルミが加わりたいだなんて。先ほどの言葉だけでも充分驚いてはいたものの、いつものルミを見ていてそんなことは絶対嫌がるお嬢さんだと思っていたので更に驚いた。

 ユンは無邪気に「いいの!?」と嬉しそうに言ってルミの服を脱がそうとしたが、ルミはその手をどけた。

 ルミは、ユンとあたしの視線を集めながらゆっくり服を脱いだ。ショーツを脱いでキャミソール1枚になっり、そのショーツをユンの頭の上にぽん、と乗せた。ユンはたまらずルミの足にむしゃぶりついた。ルミは段々官能的な表情になり、頬がますます桃色に染まっていった。女のあたしから見てもルミはとてもきれいで、化粧っ気がないのに唇が紅く、薄く産毛が生えたような艶のある肌はふっくらと健康的で本当に桃の化身のようだ。一重の大きな黒目を持ち、年齢を重ねても少女のような美しさを持っていた。あたしは逆。二重で化粧も流行を取り入れているし、髪も栗色に染めていて人工的に美しく見せることができるタイプだと思っている。

 ユンの背中からルミの手と持ち上げられた足が見え、艶のある丸い膝にあたしは見惚れた。自分の好きなユンと自分の好きなルミが交わる。こんな姿が見られるなんて。全然いやではなくて、むしろルミはおいしそうでいやらしい言い方だが、あたしも男なら食べてみたい。ルミの紅い唇が徐々に開いて行き、艶かしくてその姿にあたしは濡れてしまった。

「ルミ、きれいよ。もっとその姿を見ていたいわ。ユンも素敵。どうしてそんなふうに女を抱けるの?」

 あたしはうっとりして言った。そう、ユンはとても女を愛しそうに抱くのだ。子犬のように丸い目をしていて可愛くて、睫毛をばさばささせながらふんわりと包み込むように。彼の優しさがセックスで素直に溢れ出るという感じ。それが彼の魅力のひとつでもあった。外見は腕にタトゥーを入れていて金髪で派手だけれど。あたしはひとりで残されているのが淋しくなって、ルミの次にユンにもう一度抱かれた。そしてまた次にルミがユンを唇で勃たせて抱かれた。ひとりの男をふたりの女で共有している、と言うより、この方が自然に思えた。どうして今までこうしてこなかったのだろうと不思議に思えるほどだ。それがあたしたち3人の関係の始まりだった。

 それからは3人でカラオケボックスに行っても、そこで突然始まったりした。あたしたちが盛り上がるためだけの曲を選び、ただ流したままにしてあとはセックス三昧だった。ところが店員に見つかって締め出しを食らった。あたしたちはまだ熱い体の一部分を持て余しながら息が白く煙る夜の街を歩いた。不意にユンがぽつりと言う。

「なあ、おれたちいいのかな。こんなんで」

 寒さのせいか、弱気になっているユンが空を見ながら言った。ユンは自分からきっかけを作ったくせにこういう関係は初めてだった。けれど一対一のカップルではなく三角関係でもなく、複数で恋人になると言う関係を表す言葉だって存在するのだ、と教え、じゃ、このまま3人で全然いいね、おれはふたりとも愛してるから、と言って続いている。事実、ユンはあたしもルミも同じように愛してくれる。

 弱気なユンにルミは向き直って言った。長い黒髪が揺れる。

「いいじゃない。何が悪いの? そんな優柔不断な考えじゃ、あたしたち終わっちゃうよ」

「それもそうだよな」

 ルミはあたしとユンの間に入って両方の肩に腕をかけながら言う。

「あたしは3人でいるのが大好き。こんなに愛し合ってる人なんてその辺探したっていない」

 ルミの言葉にあたしは大いに頷いた。一対一の関係でも完全に愛し合っているとは言えない不満だらけのカップルなんてたくさん知っている。そんな人たちに比べたらあたしたちは本当に3人で愛し合っていると大声で言える。あたしたちはまだまだ若く、未来なんて考えることもなく夢中で、ただ愛していた。

「ね。今度ホテルにでも泊まりに行こうよ。そうすれば誰にも何も言われないじゃない」

 あたしが言うとルミは嬉しそうな声をあげてあたしに抱きついてきた。いい匂い。ふと思い立ち、男の装備をつけてホテルでルミを抱いてみたくなった。

 ホテルはラブホテルではなくリゾートホテルに予約を入れた。海が目の前に広がる素敵なホテルに一週間。表向きはあたしとルミが同部屋でもうひとつはユンの部屋。しかし両方の部屋を行き来して色んなことをして遊ぶのだ。考えるだけでわくわくする。その日のために仕事をしている感じだ。そして待ちに待った当日はやってきた。

 あたしたちはチェックインの時は、しおらしくして部屋を案内されながら、その景観に「うわあ」などとわざとらしく声をあげてボーイを喜ばせた。ボーイは姿の整った恰好のいい男だった。一瞬、彼も引き込んで一緒に愛を交わしたらどうだろう、とルミにこっそり提案したがルミは「うーん、あんまり好みじゃない」と言ったので諦めた。昔からルミを知るあたしとしてはボーイの姿形はルミが気に入るかと思ったんだけどな、と意外に思った。

 夕食を終え、夜が始まると同時に服など着けていられなくなった。

 あたしは大人のおもちゃ屋で買った装着タイプのペニスをつけて望んだようにルミの中に入れてみた。

「大丈夫? 痛くない? 我慢しないでね」

 あたしは腰の動きを気にして、どう? どうやったらもっといい? と、ルミに訊いているとユンが、ポルノ映画の台詞みたいだ、と言って笑うのであたしもルミも「ほんとだ!」と笑い転げた。

「そのまま続けて。気持ちいい……」

 ルミはまた艶かしく唇を開けた。ルミは淫靡だ。この中の誰よりも。そんなことを考えていると後ろからユンが突然あたしを突いてきたので思わず大きな声を出した。既に濡れていたのでとにかく気持ちよかったのだ。ルミがいたずらっぽい顔をして、あたしの胸を撫で回した。すごくいい。性的な気持ち良さと同時に母親に抱きしめられているようだった。ルミの手は小さいけれど柔らかくて行き届いてて、ふわふわしている。それとは逆にユンのバックは荒々しい。そのギャップがたまらない。ユンの動きであたしが動き、その反動であたしの装着ペニスが入ったルミも動く。やがてルミはあたしの背中に手を回し、呻くような、叫びを抑えるような声を出した。あたしのニセモノのペニスではルミのその部分がどうなっているのか直に感じることができないので、ルミのオーガズムのジャマをしないよう気をつけながらルミからペニスを抜いて指を入れた。かわいい。何度でもいって欲しい。そのうち、あたしも段々高まって来たのでルミから体を離すとユンはあたしを寝かせて今度は正面から入ってきた。ユンの柔らかな癖毛を掴みながら既に準備の整ったあたしの体はすぐに頂点に達した。ルミはあたしの唇を吸った。やだ、こんなにキスが上手いなんて知らなかった。やがてユンも間もなく射精した。その間あたしはずっとユンのお尻を撫でていた。

 一通り事を終えると、あたしたちは何も身につけず、丸いテーブルを囲み、椅子に座ってお酒を片手にお喋りをした。テレビではニュースが流れていた。

「さて、私たちの愛とこの国に対しての政治家の愛、どちらが深いでしょうか」

 ルミが真面目ぶって言う。

「もちろん、おれたちに決まってんじゃん」

「そうだよ」

 あたしも満足げに言って足でルミの胸を弄んだ。そんな時のルミはやはりとても淫靡な顔をしている。

 

遊んでいる最中気づいたことだがルミのあそこはとても小さい。あたしはその日、おかしな酔いも手伝い、ホテルのカーテンについていた棒をもぎ取り、先っぽにコンドームを被せてどこまでルミの中に入るか試してみよう、と言った。ユンとのセックスを終えたばかりのルミは足を広げたままで上半身を起こし、あたしの手の棒を見て仰天した。

「ちょっとやめてよ。そんなもの入れたら喉から出ちゃうわ」

「大丈夫よ、ゆっくり入れるから。ダメだったら言って」

 あたしはローションを垂らした棒をルミにあてがい、少しずつ挿入して、やめさせようとするルミの手をぱちん、と叩いた。ユンがくすくす笑っている。

「あ! もうダメ、痛い。本当にやめてったら! 他の遊びをしましょう!」

「だってこのくらい、ユンのペニスほども深く入ってないよ」

 あたしはもう少しだけ突っ込もうとした。その時、ユンが「もうやめよう」と言って、あたしの手から棒を奪い取った。ユンはこれまでも行きすぎたあたしの遊びをやめさせることがあったけれど、たった今のユンの声は酔っ払っているあたしの耳にも真剣に響いた。一瞬、その場に沈黙が流れた。あたしは少し頭にきてユンのお尻を蹴った。「いてっ!」と声を上げた拍子にユンはバランスを崩し、ルミの上に重なった。足を広げていたルミはユンを抱き寄せてそのままセックスを始めた。

「ああ、はいはい。勝手にやってて。あたしトイレ行って来る」

 あたしは動揺を隠しながらバスルームに行った。

 ドアを閉めるとすぐにお酒で市販の薬を流し込んだ。酒と薬の組み合わせが良くないなんてとっくにわかっている。もっと酔っ払うために必要なのだ。言葉に変換できない思いだった。いつもの能天気さはユンのあの声色で奪われた。何とか落ち着かせなきゃ。

 何でもない顔を装って戻るとふたりは折り重なったまま眠っていた。

 まったくもう。繋がったまま寝ちゃうなんて。しかしルミはどうやら起きているらしくユンの体の下で、もぞもぞと動いた。

「ユン、寝ちゃったの? 重いよ」

「あたしたちももう寝ようか。あとは明日にしようよ」

「でもユンってば寝ちゃうなんて酷いわ。あたしまだ途中なのに」

「はいはい」

 あたしとルミで協力してユンの体をどかしてルミにキスをした。あたしはルミの中に指を入れ、ルミが悦ぶ場所で動かした。ルミは声を上げてあたしに抱きついてきた。よほど気持ちがいいのか腰が勝手に動いている。あたしも濡れてきた。

「ルミ、あたしもやって」

「うん」

 ルミとあたしは頭とお尻を逆にして互いを舐めた。男性のような突起物がないせいかどれほど陰部を唇で押し広げても苦しくならない。あたしもルミも愛液がだらだらと床に流れ落ちていた。そして合図をしてふたりで同時にオーガズムに達した。それからあたしとルミは裸で床に寝ているユンの体にベッドから毛布をばさりとかけ、服を着けて部屋を出た。

 一週間はあっという間。明後日にはもう日常に戻らなければならない。しかしあろうことか、あたしはお腹の調子を崩してしまい、その日は横になって休んだ。ルミもユンも心配そうにあたしを見るけれどそんな顔をさせたくなかった。

「大丈夫よ、ただお腹壊しただけなんだから。裸でばっかりいたから冷えちゃったんだわ。ルミとユンもたまには服着てデートしてきなさいよ。晴れてるし海がきれいよ」

 あたしは強がった。その強がりは腹痛を堪えただけで、負け惜しみだとか、嫉妬だとかなどではなく心からの思いだ。それにふたりの歩く姿を俯瞰で見てみたかった。

 ルミとユンは外に出て手を繋いで散歩をしていた。幾分調子も良くなってベッドから起き上がり、窓からふたりを見ていると、とてもきれいなカップルに映った。ふたりとも似た色合いのコートを羽織り、潮風はルミの長い黒髪を揺らし、ユンはそんなルミを眩しそうに見ていた。あたしは本当にこのふたりが好きだと思った。何時間か経ち、ふたりが戻ってきてから「淋しかったよー」と大げさに言ってベッドを覗き込むルミとユンに抱きついた。ふたりは「よしよし」と、これまた大げさにあたしの頭をくしゃくしゃにした。

「体、大丈夫か?」

「うん。もう平気」

 あたしはなぜか体の調子ではないどこかが、きしむように痛むのを感じた。

 あたしたちはそれからも短い時間内に散々セックスをした。色んな形で。ユンの演じる奴隷はハマり役だったし、カップルの浮気現場に恋人が来て修羅場になる、なんていう陳腐なドラマ仕立ての演技までして本気で遊んだ。たくさんの笑いと小さな胸の痛みの中でホテルの滞在時間は過ぎていった。

 いよいよ明日、チェックアウトだという夜、あたしは不意に目を覚まし、何となく隣のベッドに目をやった。暗い中でルミは薄く目を開けていて眠っていないようだった。長い睫毛が細かく何度も震えるように瞬きをしている。眠れないの? と声をかけようとして躊躇う。ルミはじっと天井を見ていた。その姿は全身が涙の膜で覆われているように潤んで見えた。その瞬間、あたしは思った。ルミは迷ってる。この関係を。多分、予想外にあたし以上にユンを愛し始めてしまったからだ。もちろんあたしとの関係も何者にも替え難いものだとはわかってる。ユンと出会っていなかった頃の話ができるのも、あたしとルミの間にしかなかったから。

 けれど、3人という形が壊れたら、あたしはもうユンともルミとも会わなくなるだろう。そんな恐怖を多分ルミはいつも纏っていたのだ。確かに元はあたしがユンと付き合っていたからこそ始まった仲だ。ユンもあたしと同様に今はルミを愛している。でも本当にそうかな。ルミもユンも多分、3人という関係でなくても平気な人間だ。ホテルに着いたばかりの時に見たルミのボーイへの態度にも違和感を覚えていた。どんなに恰好のいい男が寄ってきても多分、ルミは目もくれない。男はユンだけでいいと思っているだろう。そして、この間のふたりの散歩の光景を思い出してもわかる。ルミとユンが作り出す静かな空気。それはルミとユンにしかないものだった。あたしにはあんな空気は作れない。ユンだって鈍感だからたった今は気づいていないだけでもしもルミと離れることになったら一番戸惑うのはユンだろう。ユンが気づくのを待つまでもない。教えてあげる。あたしはルミの目だけを気づかれないようにずっと見ていた。明け方、ようやく寝息を立て始めたルミを横目にベッドを降りた。

 下着のまま足早にユンの部屋に行った。ユンはお酒が効いているらしく、あたしが声をかけても意識はどこか遠くにあるようにぼんやりとしか返事をしなかった。そんなユンを無理矢理立たせ、肩を貸してあたしとルミの部屋までの廊下を歩かせた。裸にタオルを下半身に巻いただけのユンを引きずるようにして歩く下着姿のあたし。もしもホテルの誰かや客が目にしたら大変な騒ぎになるだろう。何とか息を切らしながらも誰とも遭遇せず、部屋に辿りついた。ユンは相変わらず、半分眠っているようにふらふらと立っているので、あたしのベッドにユンを寝かせると、すぐにすやすやと眠ってしまった。

 あたしはひとりで勝手に頷き、服に着替えてもう一度ユンの部屋に行って彼の荷物をまとめた。そしてまた自分たちの部屋に戻ってユンの荷物を置き、最後にあたし自身の荷物をまとめた。一通のメモをテーブルの上に残して、すぐさまコートを着ると夜が明ける少し前にあたしはひとりでホテルをあとにした。

 足音が、やけにこつこつとコンクリートに響いた。海を横目に見ながらあたしは考える。あのふたりが目覚めたらどう思うだろうかと。知らない内にあたしの頬が濡れていた。それもそのはず。あたしはまだルミもユンも愛してる。けれどあたしは傷つきたくない。思い続けていればきっとまた巡り合えるなんて、そんな都合のいいことは思わない。もう二度と会えないほどあたしはあのふたりを愛してやまない。朝の潮風が冷たく涙の跡を撫でて寒い。けれど涙のせいか淡く波立つ海が巨大なスライムに見えておかしかった。海沿いの道を旅行鞄を抱えてただひたすらに歩いた。

 念のために、と持ってきた傘をコンクリートに突くようにして。こんなシーン、古い映画にあったな、と思い返す。名前も忘れてしまった女優が演じた役も、たった今恋人と別れたばかりだった。けれど涙なんて流さず、ただ背筋を伸ばして前を向いて歩いていた。あたしはあの役の女みたいに強くはない。でもあたしもいつかあんなふうになれたらいい。涙で前が見えなくても杖をついてでも自分の足で歩けるように。あたしも心の目を覚ましてチェックアウトしよう。恋のベッドから。あたしはホテルの方を決して振り返らなかった。

 残してきたメモには決して大袈裟なことは書かなかった。ただひとつ重要なこと。愛し方が違うのだと書いた。それでもふたりを愛してる気持ちは変わらないと。こうしてあたしたちの関係は終わりを告げた。

 明け方を告げる鳥の声で我に返った。ああ、もうこんな時間。眠る前にもう一本、煙草に火をつけた。今も憶えているだろうか。あの日の3人が確かに存在していたことを。幸せだといい。消えた女はこうして時々、あの日の想いを煙草の煙に乗せて恋もせずに暮らしているから。

《 Fin 》

2006年11月9日 Photo / Robert Mappleshorp Easter Lilies, 1979

解説

この物語を書いた、2006年の頃の私はモノガミーやポリアモリーという言葉をまだ知らなかったけれど一夫一婦制という制度を理解しつつも、浮気とはまた違った形で複数人数で恋愛するというそんな愛の形があっても不思議じゃないだろうと思って書き始めたのだと思います。けれど最終的に自分がモノガミーのせいか中途半端に終わってしまった。軽率だったな、と。一応ラストを迎えたふうに書いているけどごまかしです。完成していないこの物語は永遠に私の課題になると思います。

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